スーダン日本国大使館

2014/04/02

海外安全対策情報(スーダン)

キーワード:外務省・在アフリカ日本大使館, スーダン共和国

1 治安情勢及び一般犯罪の傾向
(1)治安情勢
    ア 全地域
    2013年3月、アフリカ連合ハイレベル履行パネル(AUHIP)の仲介の下、スーダン及び南スーダンは、昨年9月に合意した治安措置、石油、貿易等を含む9つの合意に関する包括的履行マトリクスに署名した。これは、国境地帯の緩衝地帯(安全非武装国境地帯:SDBZ)や両国のオブザーバーによる国境地帯を監視するメカニズムの設置・稼働に向けた治安措置の進展、南スーダン産原油生産再開・輸出等、二国間関係の改善・正常化に向けた動きであった。しかしながら、6月9日、スーダン政府は、南スーダンがスーダン国内の反政府勢力を支援しているとして、協力協定の履行を停止するとともに、スーダン領内を経由する南スーダンの原油輸出の停止を発表する等、再び関係が悪化することとなった。
    その後、AUHIPの仲裁、9月3日のサルヴァ・キール南スーダン大統領のスーダン公式訪問の際の首脳会談等を経て、各種問題解決に向けた建設的な意見交換が行われ、両国関係は改善・正常化に向けて再び前進しつつあった。しかし、12月15日、南スーダン首都ジュバにおいて、クーデター未遂事案が発生し、その後、戦闘が地方へと拡大、同国の治安情勢が不安定な状態となったことから、現在、スーダン・南スーダン間の合意履行に向けた取り組みは停滞している。
   イ ダルフール地域
    スーダン政府とダルフール反政府勢力「自由と正義運動(LJM)」及び「正義と平等運動(JEM)分派」との間で和平合意(ドーハ合意:DDPD)が締結されており、和平プロセスの進展が期待されているが、同合意の履行に係る進捗は限定的である。また、その他主要な反政府勢力と政府軍(SAF)との間では、依然として散発的な紛争が繰り広げられている。
    10月13日、西ダルフール州州都アル=ジュナイナ近郊において、AU・国連ダルフール合同ミッション(UNAMID)の地域本部へ向かう給水車列が、正体不明の武装集団に襲われ、護衛していたUNAMIDのセネガル人平和維持部隊員3名が死亡、1名が負傷した。同月26日には、北ダルフール州において、反政府勢力「スーダン解放運動(SLM)」が、政府軍パトロール部隊を襲撃し、軍車両2台を強奪するといった事件も発生している。また、12月30日には、南ダルフール州において、UNAMIDの車列が正体不明の武装集団の襲撃を受け、ヨルダン人とセネガル人の部隊員2名が死亡し、2013年に発生したダルフール地域における平和維持部隊の殺害件数は、計16名となった。
    また、今年に入り、ダルフール地方では、これまでのスーダン政府と反政府勢力間での対立に加えて、金鉱山等の資源や土地問題に起因する、反政府武装勢力内の派閥対立や、部族内対立が目立つようになった。11月16日には、西ダルフール州において、反政府勢力SLMの派閥間で衝突が発生し、少なくとも15名の構成員が死亡したと伝えられている。11月19日には、中央ダルフール州において、2つのアラブ系部族で衝突が起き、少なくとも30名が死亡したとされる。
    ウ 南コルドファン州・西コルドファン州及び青ナイル州
    南コルドファン州・西コルドファン州及び青ナイル州では,第二次南北スーダン内戦時代に南部スーダン側として戦った将兵が多数残存し、「スーダン人民解放運動・北部勢力(SPLM-N)」として、政府軍との闘争を継続している。なお、SPLM-Nは、ダルフール地域の反政府勢力と連携し、反バシール政権勢力の連合体である「スーダン革命戦線(SRF)」を形成している。
    11月中旬には、西コルドファン州アブザバドにおいて、政府軍とJEMが数日間に亘って衝突し、政府軍はJEM副指導官を殺害した。
    スーダン政府は同地域で、反政府勢力の掃討作戦を展開する一方で、交渉のテーブルも用意しており、12月1日、SPLM-Nとの間で新たな交渉を行うことに合意したと発表している。
    このように同地域は、政府軍と反政府勢力の衝突により、治安情勢は依然として不安定な状態にあり、更に、南スーダンと国境を接する同地域では、本年12月以降の南スーダンの治安情勢悪化を受けて、南スーダンからの避難民が多数流入しつつあり、治安悪化の大きな懸念材料となっている。
    エ アビエ地域
   同地域は、スーダンと南スーダン両国が領有権を主張している係争地であり、両国が締結したアビエ地域行政治安暫定措置に基づいて、非武装地帯とされている。
   現在、国連平和維持部隊「国連アビエ暫定治安部隊(UNISFA)」が同地域の治安維持を担っている。スーダン・南スーダン間では、首脳会談で同地域の治安措置履行に係る協議が実施される等、最終的な問題解決に向けた努力が続けられている。
    一方で、11月27日、同地域のンゴック・ディンカ族が、同地域の最終帰属問題に関する住民投票を一方的に実施し、対立するアラブ系ミッセリーヤ族を刺激する等、依然として部族間の緊張状態が続いている。
   オ ハルツーム州
    9月23日、現政権が石油関連製品への補助金削減を含む経済改革の実施を閣議決定し、ガソリン等石油製品をはじめとする生活必需品の物価が上昇、市民生活に多大な影響を及ぼしたことから、スーダン各地で市民による大規模な抗議活動が発生した。10月中旬までには、一連の抗議活動は収束したが、この抗議活動により、多数の死傷者とともに、ガソリンスタンドや公共施設、車両等多数の建造物や財産が焼かれ、多数の商店が略奪に逢う等、甚大な被害が発生し、抗議活動に関わったとして多くの逮捕者が出ている。
    バシール大統領は、12月9日に内閣改造を発表し、新内閣による政権運営が始まったが、特に今後の経済改革の行方と国民生活への影響に関して、現政権に批判的な感情を持つ国民も多く、更なる補助金削減が実施された場合、市民による大規模な抗議活動が再発する可能性も否定できない。
(2)一般犯罪
  ア ハルツーム州の一般犯罪は、当局から最新の犯罪統計が発表されていないものの、毎年増加傾向にある模様であり、特に9月23日に発表された政府の経済改革を受け、石油関連製品をはじめ物価が上昇しており、窃盗及び強盗事案の増加が懸念されている。
    イ 未だ政府と主要反政府勢力との停戦が実現していないダルフール地域においては、武装集団が政治、経済的目的で国連職員及び国際NGO職員等の外国人を狙う事件が発生しており、国連PKO・NGO等が使用する車両及び金品等を強奪する事案が絶えない。
    ウ 10月から12月末までの邦人を被害者とする犯罪認知件数
   ○ 邦人女性被害のひったくり事件の発生(10月5日)
 10月5日(土)午後8時00分頃、ハルツーム2地内において、被害者がバス停に向けて歩いていたところ、前方から近づいてきたバイクに乗った二人組の男に、すれ違いざまに所持していたショルダーバッグ(携帯電話等在中)をひったくられたもの。
   ○ 邦人女性被害の車上狙い事件の発生(10月18日)
   10月18日(月)午後7時00分頃、アマラート地区ムハンマド・ナジーブ通りの雑貨店前において、被害者が車両を止め、店内で買い物をしていたところ、何者かが後部窓ガラスを割り、後部座席下に隠してあったバッグ2個(パソコン等在中)を窃取されたもの。
   ○ 邦人団体被害にかかる部品狙い事件の発生(12月21日)
 12月21日(土)午後6時00分から翌22日(日)午前8時00分頃までの間、某団体所属運転手が、アマラート地区のホテル前に同団体名義の車両を駐車しておいたところ、翌朝、タイヤ4本が盗まれ、車体がレンガに乗せられた状態で発見されたもの。
       
2 殺人・強盗等凶悪犯罪の事例
(1)殺人 
    邦人の被害事件は認知していない。
(2)強盗
    邦人の被害事件は認知していない。
(3)強姦
    邦人の被害事件は認知していない。
(4)その他
    邦人の被害事件は認知していない。

3 テロ・爆弾事件発生状況
  管轄内における当該事件の発生は認知していない。

4 誘拐・脅迫事件発生状況
  管轄内における当該事件の発生は認知していない。

5 対日感情
    スーダン国民は、大使館やJICA、NGO団体の各種活動、トヨタやソニー等の日本企業の良質な製品を通じて、日本に対して良好なイメージを持っていると思われるが、知日家、親日家と呼ばれる人々は少数であり、突発的な事件(イスラムへの冒涜行為、飲酒に関する事故)等により、対日感情が急激に悪化する可能性がある。

6 日本企業の安全に関する諸問題
  関連情報なし。
   
7 日本人安全対策のためにとった具体的措置
(1)注意喚起のためのメール配信
  (ア)9月23日からスーダン各地で発生した大規模な抗議活動に際し、在留邦人に対し、入手した抗議活動発生状況をタイムリーにメール配信した。(9月24~30日:10回、10月1~4日:4回)
  (イ)10月5日(土)午後8時00分頃、ハルツーム2地域において、日本人女性1名がバス停に向かって歩いていたところ、前方から近付いてきたバイクに乗った二人組の男に、すれ違い様に所持していたショルダーバッグをひったくられるという事案が発生したことから、在留邦人に対し、注意喚起するメールを一斉配信した。(10月7日発信)
  (ウ)11月18日(月)午後8時00分頃、アマラート地区ムハンマド・ナジーブ(Mohammed Najeeb)通りの雑貨店前において、日本女性がレンタカー(SUV:スポーツ用多目的車)を店先に止め、同乗者(スーダン人男性)とともに店内で買い物をしていたところ、車両後部の窓ガラスが割られ、後部座席に置いてあったバッグを盗まれるという事案が発生したことから、在留邦人に対して注意を喚起するメールを一斉配信した。(11月19日発信)
(2)その他の措置
      特になし